ライオン王子に飼われたネコさん。
(体壊しそう……。って、なに心配してんのよ!)

自分で自分の頬を殴って戒める。
心配なんてしてやる筋合いはない。

寧ろ、しばらく顔を合わせなくて済むことに喜ばなくては。それで帰ってくる頃には紅羽との契約期間も終わりかけているだろう。

ふんふんと鼻歌でも歌ってやろうかと考えて、ハッとする。

(ちょっと待って!?)

最近の傾向通り週単位ならいい。
だが今、海外に月単位で行かれるのは困る。

さっさとキスをして元の姿に戻って、しがないOL生活をしつつ婚活をしようとしているのにそれではいつまで経っても戻れなくなってしまう。

紅羽の魔法も永久的なものではないので、彼女の体にも負担がかかる。

(まずいまずいまずい!)

隠れている場合ではない。
するりとテレビ台の後ろをすり抜ける。

彼女は気づいていないがそれはさながら埃取りが埃を絡め取るような動きで、出てきた時には真っ白な毛並みがグレーに染まっていた。

「きったな」

だから、怜音がそう言うのも無理はない。

「はぁ!?」と思いつつ自身の体を見てみれば確かに汚い。動くたびに埃がふわりと浮かんでくしゃみさえ出る始末だ。

「お前どこにいたの?」

汚いといいつつ抱き上げて埃をパッパと払う怜音に意味もなく心臓が跳ね上がりそうになって思わず息を止めた。

「……台の後ろか」

ギクッとして怜音の視線を追えば残念なことに埃が点々と落ちていて、それがどこに隠れていたかという十分な証拠になった。

せっかくいい隠れ場所だったがこの手ももう通用しない。

「今度あそこも掃除しねーと。取り敢えず今は風呂だな」

真白は嫌な予感がして精一杯暴れたが、以下略。
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