ライオン王子に飼われたネコさん。

ライオン王子は水も滴るいい男


嫌な予感通り、浴室に連れて行かれて体を洗われた。

肌を見られることも触られることも何度もしてきたし、お風呂だって一緒に入ったこともあるし、髪を洗ってあげたことだってあるけど逆に洗われたことはなかった。

しかも今は彼女でも何でもなく、人間ですらない猫の姿で。

ありとあらゆるところに女より筋張っていて、綺麗な手が触れ、おまけに存外優しい手つきだったことに気が狂いそうになった。

確実に真白の中の何かがすり減らされ、最初は抵抗していたが最後の方はもう魂が抜けかけていた。

台の後ろに隠れるという名案が墓穴を掘った。
自分を恨むほかない。

そしてもう一つ恨むとすれば、お風呂場で暴れるのはよくなかった。

目の前に全身ずぶ濡れの男がいる。

真白がちょっとばかり暴れている間に怜音の服はびしゃびしゃになっていたらしい。全ての工程が終わってハッとした時にはこうなっていた。

怜音が上の服を脱いだ。割れた腹筋とやたらと綺麗な肌が露わになって思わず目を逸らす。

彼は真白の心中などもちろん気にしていないので雑巾を絞るように服を絞り上げ、それから真白を浴室の端に移動させた。

「ちょっと待ってろ」

そう言って彼はシャワールームへ向かった。

やたらと広い浴槽は多分、真白のマンションの部屋に相当するくらい広く、シャワーが二つある。

一つは掃除をする時に便利な浴槽に近い位置にあるもの。もう一つは半個室のような形で設置されているもの。

怜音は後者でシャワーを浴びている。

これだけ広い浴室であれば前者のシャワーを使ったところでわざとではない限り今真白がいる端までは飛んでこないはず。

彼なりの優しさだったのだろう。

(だから、絆されるな!)

自らに猫パンチを喰らわせ、大人しく座って待った。
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