ライオン王子に飼われたネコさん。
ちらっと後ろを向く。
割れた腹筋。引き締まった体。すべすべできめ細やかな肌。濡れた髪は照明でいつも以上にキラキラ輝いていて、髪先や肌を滑る水滴は彼のただでさえ有り余った色気を凄絶なものにさせている。
水も滴るいい男とよく言ったものだと思う。
そうでなくても見た目だけはいい男で、いつまで経っても見慣れることはない美しい男なのだが。
よくぞ五年もこんな男の側にいられたものだと真白はつい感心してしまう。
「こんなもんか?」
(どれどれ。)
どれくらい毛が抜けているものなのか興味本位で振り返ってみると、ブラシのシートに大量に毛が張り付いていた。
(……これ、人間になった時にどこかまるっと毛が無くなってるとかない!?)
脱毛したい部分なら寧ろ歓迎したいところだが、頭に十円ハゲなんてものができているのだけは勘弁だ。
そんなものが出来ているのではないかと不安に思うくらいには抜けている。
ショックと不安とで怜音が髪を乾かしていることにさえ気づかず、気づけばベッドに横たえられていた。
ハッとして距離を取ろうと身動げば手が伸びてきてそれを阻止される。
「行くな」
強い命令口調にぎくりとして振り返る。
アンバーの瞳が暗闇の中でギラギラと獲物でも見るように浮かんでいた。
きっとサバンナの夜にこんな瞳を見つければ被食者は即座に逃げだしてしまうだろうが、真白は違った。
逃げられず、囚われる。