ライオン王子に飼われたネコさん。

どこにも逃げ場なんてないし、どこに行く宛もない。
そうでなくてもきっとこのアンバーからは逃げられなかった。

抱き寄せられて爪を立てることだって出来たはずなのに、この美しい男を傷つける術を真白は知らない。

「明日から暫くイギリスに行かなきゃならないんだ。また眠れなくなる」

(眠れなくなる?)

どこに行くのか。何日くらい行くのか。その方が真白にとって知りたい情報の筈なのに、そんなことは頭から抜け落ちていた。

怜音は一度寝たら何度も起こさなければ起きない。
いつも遅刻寸前まで眠っている。
それで桃坂はいつも苦労していた。

だが、真白がここに来てから一度も寝坊せず、朝も早く、それも一人で起きている。普通の人には当たり前でも怜音に当てはめればそうではない。

(もしかして、眠れないから起きていたの……?)

だとしたらいつからなのだろうか。
少なくとも十月までの彼はそうでなかった。

よく考えてみれば、日本と海外を行き来してショーや撮影をこなし、私生活はマスコミに追われて常に監視されているようなもので息つく暇などほとんど与えられていないようなもの。

それを表に出さない辺り、彼もプロだ。
だけど、どれだけ強く見えてもただの人間なのに。

「何でか知らねーけどお前がいるとよく眠れるんだ。暖かくていい匂いするからかな」

また許可もなくすぅ、と匂いを嗅がれたけれどいつものように毒づく気持ちにはなれなかった。

(変態だとは思うけど、こんなに弱ってるとねぇ…。)


この五年間、弱ったところなんてほとんど見たことがない。

ライオン王子の名に相応しい強さはオンだろうがオフだろうが関係なかった。彼はいつだって誰に対しても強者だった。
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