ライオン王子に飼われたネコさん。
「明日、二人でケーキを食べようね」
今思えばまともに聞いた最後の言葉はそれだった。
連日の容赦ないスケジュールに加えて前日に撮られた写真について取材陣が押し寄せてきたこともあってハロウィン当日はいつになく疲れ切っていて、少しだけ寝ようと思っていたら深い眠りについてしまった。
「怜音」
名前を呼ばれ、揺さぶられ、意識がゆーっくりと覚醒へ向かおうとするが亀の歩みのように遅く、真白が何かを言っているもののぼんやりとしか聞こえない。
「今からいい人を探して、付き合ってってなるとギリギリなのよ」
(……いい人を探すって、なんだ。探す必要ないだろ。)
それにギリギリとは何の期限のことなのか。断片的に聞こえてくる言葉では真白が何の話をしているのかが分からない。
「だからここでお別れしましょう」
(………は?)
お別れ。
つまり真白が別れようと言ったのか。
ありえない言葉と展開に夢だと思った。普段夢なんて全く見ないが、疲れすぎて見た夢だと。
だが、夢にしては妙にリアルで、あまりに縁起でもない内容だったので、もう一度深い眠りの方へ行こうとは思えず何とかして起きようと眉間に力を込めた。
瞼に柔らかいものが一瞬降ってきた感覚に漸く目を覚ましたが、真白はいなかった。
「夢、だったのか?」