ライオン王子に飼われたネコさん。
シャツを羽織り、リビングに向かえば昨日途中で挫折したはずの荷造りは終わっていて、机の上には探していたパスポートがあった。

冷蔵庫の中にサンドウィッチとサラダ、野菜のスープがあって、真ん中の棚には白い箱。

開けてみればチーズケーキとシフォンケーキ。

真白がいつも買ってくるスイーツといえば苦めのものか、カロリーが抑えめのもの。

今回はどちらも後者だった。

仕事上、体が資本なので無駄な肉になりかねないものは排除しなければならないが、そもそも怜音は甘いものを殆ど口にしないので大したことではない。

ただ、本当は甘いものが好きな真白が怜音に合わせてそういったものを選んでいるのを知っていた。

「好きなものを買えばいいのに」

冷蔵庫に戻しながらぽつりと呟く。

飽き性な怜音のために二種類用意してくれているが、一口二口くらいしか口にしないので結局真白がほとんど食べてしまう。

それなら自分の好きなケーキを買えばいいのに、怜音の一口二口のために合わせている。


怜音はシーズン毎にあるイベント前後は仕事で埋め尽くされて時間がないことが多い。

パーティとかどこか遠出するとか、そういうことができない代わりに少しでも何か特別なことで、かつ、手軽なものというのが真白の中ではケーキだったのだろう。

いつだったか、「同じ空間で一緒に食べるってことが大事なのよ」と言われたことがある。

特別な日に一口でも同じものを口にすることが重要なのだと。

怜音には食べないという選択肢があったはずなのに必ず一口食べてしまうのは彼女がそう言ったからであり、隣で美味しそうに食べられるせいだ。
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