私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!2~生存ルート目指したらなぜか聖女になってしまいそうな件~
下町育ちのカミーユは自分がニジェルにはふさわしくないと以前から気にしているのだ。
「婚約者はまだいません」
ニジェルは事務的に答える。
「よかったわ! ニジェル様のご兄弟はイリス様だけでしたわね?」
ガリーナはイリスを見た。
「はい」
「フロレゾン王国は女性も爵位を継げまして?」
「今のところ継承権を持つのは男子のみです」
「まぁ! 古いのね!」
「たしかに!」
イリスとガリーナのやりとりにレゼダが苦笑する。
カミーユはうつむき黙々と食事を取っていた。ニジェルを婚約者候補にしたいという、ガリーナの意図をヒシヒシと感じ取っていた。
確かに私より王女様のほうがニジェル様にふさわしいもの。
カミーユはそう思い、顔が上げられない。知的で、美しい王女。つい最近まで下町で暮らしていたカミーユとは何もかもが違う。
ニジェルはため息をついて立ち上がった。
「イリス、席を交換して」
不穏な声に戦々恐々としてイリスは立ち上がる。ニジェルはイリスがいた席に座ると、隣のカミーユの左手に手を乗せた。
「ニジェル様……こんな、あの、マナーが……」