離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
――その結果が、この状況だ。
『あの、私……』
貧乳コンプレックスについて、言うか言うまいか。
なにも告げずに結婚したら、詐欺みたい? 夫婦として生活をともにしたらいずれバレるのだし、それなら最初に言っておいた方が……。
ぐるぐる考えている間も、真紘さんは夜空のように輝く瞳で私を見つめている。握られた手もそのままだ。
冷静になりたいのに、ドキドキしてそれどころじゃない。
その時、廊下に続く襖の向こうから父の声がした。
『佳乃、真紘くん、入るぞ』
言葉と同時にスッと襖が開けられ、父が姿を現す。そして、真紘さんに手を握られ頬を赤らめる私、という構図を目にして、なにか勘違いしたらしく相好を崩した。
『ほう、まだ電話を続けていた方がよかったようだな』
真紘さんはパッと私から手を放し、畳に手をついて父に頭を下げる。
『朝香先生。大事な娘である佳乃さんに不躾な真似を失礼しました。今すぐにでも結婚したいほど魅力的な女性だったので、つい……』
強引な場面を見られたせいか、少々ばつが悪そうに語る真紘さん。しかし父に気分を害したそぶりはなく、むしろ娘である私をほめられて悪い気はしないようだった。