離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

――その結果が、この状況だ。

『あの、私……』

 貧乳コンプレックスについて、言うか言うまいか。

 なにも告げずに結婚したら、詐欺みたい? 夫婦として生活をともにしたらいずれバレるのだし、それなら最初に言っておいた方が……。

 ぐるぐる考えている間も、真紘さんは夜空のように輝く瞳で私を見つめている。握られた手もそのままだ。

 冷静になりたいのに、ドキドキしてそれどころじゃない。

 その時、廊下に続く襖の向こうから父の声がした。

『佳乃、真紘くん、入るぞ』

 言葉と同時にスッと襖が開けられ、父が姿を現す。そして、真紘さんに手を握られ頬を赤らめる私、という構図を目にして、なにか勘違いしたらしく相好を崩した。

『ほう、まだ電話を続けていた方がよかったようだな』

 真紘さんはパッと私から手を放し、畳に手をついて父に頭を下げる。

『朝香先生。大事な娘である佳乃さんに不躾な真似を失礼しました。今すぐにでも結婚したいほど魅力的な女性だったので、つい……』

 強引な場面を見られたせいか、少々ばつが悪そうに語る真紘さん。しかし父に気分を害したそぶりはなく、むしろ娘である私をほめられて悪い気はしないようだった。

< 10 / 147 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop