離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

『そうだろう。佳乃は私より妻に似たから、尖った棘や毒もない』

 父の言う通り、私の顔や性格はのほほんとした母譲り。母はあまり政治家の妻という雰囲気はなく、平凡な主婦である。

『先生の持つ棘は、日本の未来を切り拓くための剣。毒は言い換えれば薬です。保身のため守りに入った発言しかしない政治家とは違い、先生は毒を吐くフリをして、よりよい日本社会のための一石を投じているのです』
『ははは、きみは相変わらず口が巧いな』

 真紘さんの言葉をお世辞として軽くあしらいつつも、父は上機嫌に笑いながら席に着く。

 真紘さんは銚子を手に取り、父の盃に酒を注ぐ。続けて、父が真紘さんの盃に。そしてふたりは、私には入っていけない難しい政治の話をし始めた。

 さっきまでの真紘さんとは、また別人の顔になった。もしかして、私に甘い態度で求婚するのは父に取り入って政治家になりやすくするための方便?

 悶々としつつも、その日は結局それ以上真紘さんとふたりで話すチャンスはなかった。

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