離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「今日、結婚一周年の記念日だよな。いつもありがとう、佳乃」
百本はありそうな、真っ赤な薔薇の花。その甘い香りの向こうから、真紘さんが優しく語りかける。
ありがとうとも言えず無言で受け取る私を、真紘さんはニコニコと見つめた。
こんなに優しい人とこれから別れようとしている。そう思うとつい視界が涙でぼやけ、鼻がぐすっと鳴ってしまう。
「感動して泣いてるの? かわいいなぁもう」
涙の理由を勘違いした真紘さんが、私の背中に手を伸ばす。
花束の包みがクシャッと音を立て潰れ、花束ごと真紘さんに抱きしめられ――そこでようやく、我に返った。
「あの、真紘さん……。大切な話があります」
真紘さんの体からパッと離れて、真剣に彼の瞳を覗く。不思議そうに首を傾げる彼は、これから離婚を告げられるなんて微塵も思っていないだろう。
胸が痛むのを感じつつ、真紘さんをダイニングへ促す。ネクタイを緩めながら私の後を追ってきた彼は、テーブルの上に置かれたものに気づくと、「えっ……」と声を漏らして呆然とした。
「とにかく、座ってください」
「あ、ああ」