離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「常務……お疲れさまです!」
「お疲れさま。今、少しお話しできますか?」
「はい、構いませんが」

 重役相手なので即座に返事をしたが、頭の中は疑問符でいっぱいだ。

 常務が私に用事? なんで?

「私、更衣室に行ってるわね。お先に失礼します」

 雨音さんは常務に綺麗なお辞儀をし、先に更衣室へ向かう。常務は彼女の背中を少々長めに見送った後、改めて私に向き直った。

「柳澤さん、僕の秘書にならない?」
「えっ?」

 私が常務の秘書……?

「社長が、受付業務のすべてをテンマくんに任せる計画を前倒しにしたいらしいんだ。来月の新年度には間に合わなくても、五月くらいから。そうなると、きみや榎本さんは仕事がなくなってしまうだろう?」

 確かにその通りだ。しかし、こんなに早くテンマくんに仕事に奪われるとは想定外で、ショックを隠し切れない。

「ついに必要なくなるんですね、受付……」

 思わず呟くと、常務はやわらかく微笑む。

「そうだとしても、今までの経験は無駄じゃない。基本的なビジネススキルに加えコミュニケーション能力も身についているし、突発的な事態に対応するのにも慣れたはずだ。秘書としても必ずいい仕事ができる。来週返事を聞かせてもらうから、よく考えておいて」

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