離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「雨音さん、なんて返事を?」
「まだ保留にしてるわ。でも、秘書課って最近ひとり退職した上、近々産休に入る社員もいるらしくて、人材不足なのよね。最終的には断れない気がしてる」
「……なるほど」
断ったところで、どこに配属されるかわからない。だったら、業務内容が受付と重なる部分も多い秘書を選んだ方が賢明なのかもしれない。
「テンマくんにしてやられたわね」
「ホントですね」
ふたりで力なく笑い合った後、雨音さんは先に帰り支度を終えて出ていく。
このワンピース、あと何回着られるんだろう……。
長年仕事をともにしてきた相棒との別れが迫っていることに一抹の寂しさを感じながら、私もようやく着替えを始めた。
スーパーで買い物をしてから家に帰り、夕食を作るためにキッチンに立った。
料理は実家にいた頃ひと通り母から仕込まれたので、和洋中、なんでもそれなりにできる。今夜は真紘さんにカクテルを作ってもらおうと思っているので、洋食のメニューに決めた。