離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 タラのムニエル、春キャベツのパスタ、ほうれん草のポタージュ、リンゴ入りのコールスロー。

 真紘さんはなにを食べても美味しいと言ってくれるので、いつも気合いを入れて作ってしまう。

 彼自身も料理が好きなので、休みの日や彼の帰宅が早い日には、逆に料理を作ってくれる。よく考えたら、とても幸せな結婚生活だ。

 ……離婚、しなくてよかったな。

 今さら感慨に浸っていると、キッチンに置いていたスマホが短く振動した。

【あと五分で着く】

 もう、駅からマンションに向かっているらしい。料理を仕上げなくては。

 あらかじめ茹でてオイルを絡めてあったパスタをフライパンに入れ、キャベツやベーコンと一緒に軽く炒める。出来上がったパスタを皿に盛りつけているところで、彼が帰ってきた。

「ただいま。美味しそうなにおいがする」
「おかえりなさい。ちょうどできたところです」

 テーブルに皿を置きながら彼に目を向けると、真紘さんは心底ほっとした表情を浮かべた。

「真紘さん?」
「……よかった。今日も、離婚届と思いつめた佳乃が待っていたらどうしようかと」

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