離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
昨夜の一件で、帰宅という行為自体がトラウマになってしまったらしい。完全に私のせいだ。
これからは、真紘さんに早く帰りたいと思ってもらえるよう、努めなくちゃ。
「ごめんなさい。でもむしろ、今日は逆のことを思っていましたよ。真紘さんと離婚しなくてよかったなって」
「佳乃ぉ~」
椅子にバッグを置いた彼が、両手を広げてガバッと私を抱きしめた。大げさな彼にクスクス笑っていたら、耳元で彼が尋ねる。
「そういえば、バレなかった? キスマーク」
「……実はバレました。仲のいい先輩に」
「仲のいい? 女の人だよね?」
体を離した真紘さんが、不安げに瞳を覗いてくる。どうやら嫉妬してくれているようだけれど、残念ながら私はそんなにモテない。
安心させるように微笑んで頷くと同時に、私は雨音さんと交わした約束を思い出す。
「そうだ、その先輩が、私と真紘さんと三人で食事をしたいそうなんですけど」
「もちろん構わないよ。会社での佳乃の姿知らないから、話聞くの楽しみ」
快諾してくれて、ホッとする。日程調整はあとでするとして、とりあえず冷めないうちに夕食を取ることにした。