離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

「なに? カッコいい旦那様だなぁって?」

 言いながらからかうように顔を近づけてくる彼に、つい頬が熱くなってしまう。

 そんなつもりで見ていたわけじゃなくても、真紘さんがカッコいいのは事実なんだもの。

「そうです」

 苦し紛れに彼を睨みつけ、小声で認める。すると今度は真紘さんの頬が赤く染まり、「もぉ~」とため息をつきながら、なぜかその場にしゃがんでしまった。

「真紘さん?」

 声をかけると、顔を上げた彼は恨めしげな上目遣いで私を見る。

「……外なのに抱きしめたくなっちゃうでしょうが」

 落ち着いていたはずの顔の火照りが、一気に舞い戻る。

 ふたりして赤い顔をしながら、なんとも言えない空気で見つめ合っていたその時。

「仲がいいのは結構ですけど、帰ってからやっていただけます?」

 電話を終えたらしい雨音さんが、若干の嫌味を含ませつつそう言った。

 笑顔だけれど、目の奥が笑っていない。バカップルだと思われたに違いない。

「す、すみません! お見苦しいものを」
「今のは完全に無自覚な佳乃が悪い」
「真紘さんだって変なこと言ったじゃないですか!」

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