離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 その後も真紘さんと平穏な結婚生活を続ける中、翌週には還暦を迎えた父の誕生日を、両親と私たち夫婦で祝った。

 お見合いの時にも訪れた父お気に入りの料亭で用意してもらったのは、華やかな祝い膳。尾頭付きの鯛や赤飯など豪華な懐石料理が並ぶ中、まずは記念撮影をした。

 赤いちゃんちゃんこの代わりに贈った赤いネクタイを着けた父は、照れながらもうれしそう。

 従業員の女性にスマホで撮ってもらった写真を確認すると、父は目尻を下げて笑った。

「健康にこの年を迎えられて嬉しいばかりだ。あとは、真紘くんが立派に私の跡を継いでくれれば思い残すことはないな」
「先生のご期待に添えますよう、精進してまいります」

 家であまりは話題にのぼることはないが、真紘さんはやはり将来的に政治家を目指しているようだ。

 ……だから私と結婚したんだっけ。最近あまりにも幸せなので、自分たちが政略結婚だったことをすっかり忘れていた。
 
 きっかけがなんであれ、今は愛し合っているのだから関係ないけれど。

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