離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「娘の両親に対する、完璧な回答だ。きみは国会の答弁書を作るのも得意だものな」
……違う。今のは真紘さんの本音よ。
さっきから、物事を斜めに見てばかりの父にムッとする。
「官僚なら誰もが通る道です。僕だけ特別うまいというわけではありません」
真紘さんも特に否定することなく、控えめにそう言っただけ。
なんとなく納得がいかない。両親の前だからとわかっていても、彼の口から確固たる愛情を感じられるような言葉が聞きたかった。
「まぁ、謙遜しちゃって。佳乃は幸せね、将来有望な真紘さんの妻になれて」
「あとは孫だ。孫の顔を早く見せてくれ」
父がそう言って、がははっと下品に笑う。酔っぱらっているのと、娘である私が席を外しているせいで気が大きくなっているのだろう。真紘さんだって困っているに違いない。
同じことを思ったらしい母が「あなた、飲みすぎよ」と軽く窘めたところで、私はようやく襖を開けた。
真紘さんの隣に腰を下ろすと、「遅かったね」と声をかけられる。会話を盗み聞きしていたからだとは言えないので黙っていると、彼が「あっ」となにかに気づく。