離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです

 迷いからその場を動けずにいたら、さっそく司波さんからショートメールが送られてきた。真紘さんが女の人と入ったバーの名前と住所、それに司波さんが座った席の場所を教えられる。

「行くしかない……」

 自分を奮い立たせ、路上でタクシーを拾う。到着までの間も落ち着かず、車窓からの夜景を眺めながら、真紘さんを疑いそうになる自分を必死で宥めた。


 薄暗い店内を琥珀色の照明が照らすそのバーに着くと、私は顔を隠すように俯き司波さんの待つテーブル席に移動した。

 切れ長の目で私を一瞥した司波さんは、カウンターの方向を不機嫌そうに顎でしゃくった。

 遠慮がちに視線を向けた先には、こちらに背を向け、仲睦まじそうに寄り添っているひと組の男女がいた。

 見覚えのあるスーツにふわりと波打つ髪……背格好も間違いなく真紘さんだ。

 テーブルの下でギュッと拳を握り締め、唇を噛む。そうしてふたりを見続けていると、今まで前を向いていた女性が真紘さんの耳元に唇を寄せ、なにか囁く。

 その横顔を見た私は、二重の意味でショックを受けた。

 どうして彼女が真紘さんと一緒にいるの?

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