離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「それは、彼女に聞いたほうがいいかもしれない。俺も全体像を把握してはないんだ。彼女がどうして〝カップルクラッシャー〟になることで自分の価値を見出そうと思ったのか」
「カップルクラッシャー?」
聞き慣れない言葉に首を傾げると、真紘さんが同情するような目でカウンターの方を振り返る。
雨音さんは先ほどと同じ席に座っていたけれど、カウンターに突っ伏して肩を震わせていた。
真紘さんの行動がどうやら浮気ではないと察するや否や、司波さんは『紛らわしいことをするな』とぷりぷり帰っていった。
本当なら奥様とお子さんが待っている家に早く帰りたいのに、私たち夫婦を心配して一緒にいてくれたらしい。司波さんの見た目はちょっぴり冷たそうだし口も悪いけれど、とても情が厚い人だと感じた。
その後、私と真紘さんはカウンター席に移動し、ふたりで雨音さんを挟むようにして座った。
私の前には、まだ手付かずのオレンジ色のカクテル。雨音さんの前には、ビールのようなお酒が置いてあった。
雨音さんは泣きはらして真っ赤に充血した目に私を映し、「ごめんなさい……」と声を震わせる。