離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「佳乃ちゃんが羨ましかった……ううん、妬ましかったの。一年間のレスを乗り越えて旦那様と結ばれて、首にはキスマークまであって。それが癪だから、ふたりの仲を壊しちゃおうって思った。いつもみたいに」
「いつも……?」
思わず聞き返すと、雨音さんがふっと儚い笑みを浮かべて頷く。さっき真紘さんの言っていた『カップルクラッシャー』という言葉の意味が、頭の中でようやく輪郭を持ち始める。
「昔は、こうじゃなかったのに……人より胸が成長し始めた中学の頃からかな、周りとうまくいかなくなってきたのは」
雨音さんはカウンター内に並ぶ洋酒の瓶を虚ろな目で眺め、語りだした。
当時の雨音さんは人並みに恋をして、憧れだったひとつ上の先輩と付き合うことができたそう。
しかし、先輩の目当ては雨音さんの胸だけ。それでも好きだからと求められるままに体を差し出したら、学校中で〝ビッチ〟だと噂になってしまったそうだ。
「結局先輩にはフラれたうえ、女子からは完全無視。男子はすれ違いざまに胸に触れてきたり、直接『揉ませて』なんて頼んでくる輩もいた。〝アイツにはそういうことをしていい〟と思われていたみたい。悔しいから、私も私で〝好きなだけ触れば〟って態度でいたの。それもよくなかったのよね……」