離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
高校生活も似たようなもので、雨音さんは男性を見下すようになっていく。大学生になって初めた居酒屋のバイトでも、従業員や客からセクハラの数々を受けたそうだ。
「社会人になって恋人を作ってもみたけれど、私に寄ってくる男の人は、結局みんなこの胸が目当てなの。性の対象物としか見られていないから、デートはもっぱら自宅かホテルばかり。生理中だからって断っても、無理やり突っ込まれたこともあるわ」
「ひどい……」
思わず、心の声が漏れた。雨音さんはいつも男の人を手のひらで転がして、自分のしたい恋愛スタイルを貫いているのだとばかり思っていた。
でも、軽いように振舞っていたのは、むしろ虚勢だったのだ。そんな壮絶な過去があったなんて思いもよらなかった。
「そんな生活でどんどん自分が屈折していく中で、彼女や奥さんがいる男性を誘惑して自分のものにすると、不思議な優越感を覚えることに気づいたの。自己承認欲求っていうんだっけ? 私の中のそういうものが、ようやく満たされた気がした」
「なるほど。それで俺をターゲットにしたわけですか」
今まで黙っていた真紘さんが、納得したように頷く。