離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
「私って、やっぱり政治家になるための踏み台なんじゃないですか?」
心の隅に追いやっていたはずの不安が、つい口から出た。
真紘さんの瞳が、動揺したように揺れる。
「佳乃、なに言って――」
「真紘さんがわからなくなりました。……先に帰ります、私」
私を引き留めようと肩に置かれた真紘さんの手をそっと押しのけ、私は席を立つ。
そして、立ったまま心配そうに私たちを見守っていた司波さんと花純さんにぺこりと頭を下げ、そそくさと部屋のドアを目指す。
「なにをボケッとしてるんだ、追えよ馬鹿」
司波さんが真紘さんをけしかける声がしたが、彼が立ち上がる気配はない。
図星だったから、追いかける気もしない?
意地になった私はすっかり真紘さんを悪者に仕立て上げ、悶々としながら司波家のマンションを後にした。
結婚していると、こんな風に出てきたって、帰る家は同じなのが困る。
どんな顔で真紘さんと会えばいいのかわからないが、かといって実家に帰るのも気が進まない。急に帰ったら怪しまれるだろうし……。
行く当てがないので結局マンションに戻り、エントランスの自動ドアをくぐろうとした瞬間、中から誰かが出てきた。