離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
悶々としながら部屋に着くと、お母様にソファを勧めて自分はキッチンで紅茶を入れる。
お母様は部屋をキョロキョロ見回した後、座ったまま私の方を見た。
「どう? 真紘とはうまくやってる?」
どきりと脈が跳ねたが、お母様に無用な心配を掛けてはいけない。私は精いっぱい口角を上げて答える。
「はい。真紘さん、とても優しいので」
「そう。よかったわ~。あの子、昔からなににも執着しないタイプだから、ちゃんと奥さんを大切にしているのか心配だったの」
なににも執着しない……。
なんとなく胸がざわっとするのを感じつつ、お母様に頂いたケーキと紅茶をお盆に乗せてリビングへ運んだ。
「ありがとう。佳乃さんも座って?」
「はい」
緊張気味にお母様の隣に腰を下ろすと、自然と美しい横顔を見つめてしまう。
五十代の私の母親より年上だったはずだが、肌の張りや髪のツヤは四十代かそれ以下に見えるくらい若々しい。