離婚を申し出た政略妻は、キャリア官僚の独占愛に甘く溶かされそうです
朝香先生はきちんと有権者の目線を持っている政治家だと常々思っていたし、時に毒を吐くが決して失言というわけではなく、確固たる自分の理想を持っている。
彼の政治理念を引き継いで議員になる。将来のビジョンとして、悪くはなさそうだが。
『娘さんは了承しているんですか?』
『ああ。妻が言うには、娘は男運があまりないらしい。本人にもそれとなく話したら、私の選んだ相手なら会ってみると言ってくれている』
男運がない、か……。政略結婚前提の相手に〝会ってみる〟と言うくらいだから、あまり恋愛でいい思い出がないのだろう。俺と同じだ。
これもなにかの縁なのかもしれない。できることなら、大切にしてあげたいな。
まだ顔も見ていない女性に対しておかしいかもしれないが、俺はそんな風に思った。
恋愛に対してあきらめを抱く反面、心のどこかでずっと渇望していたのかもしれない。俺の内側を見つめてくれる、たったひとりの運命の相手に出会うことを。
だから、これを最後の恋にしようと決め、佳乃と見合いをした。