私の愛は···幻

🎹おばあ様


目を覚ますと

左手に温もりが·····
アルかな······

左を見るとアルが目を真っ赤にして
こちらを見ていた。

頬も赤い。温斗だな·····と思い
頬に手をのばすと
ボタボタとアルの瞳から落ちる。

『痛い?』
と、訊ねると
アルは首を横に振り
『ごめんね。ごめんね。』
と、言うから
今度は、私が首を振り
『要らなくなった?』
と、訊ねると
アルは大きく目を開きながら
首を大きく振り
『そんな事あるわけない。
絶対にない。死んでもない。』
と、言うアルに
笑いが出る。
『うん。わかってる。
と、言うか、そうでないと困る。
·············· ······ ········
だけどっ······
本当に要らなくなったら
先に言って欲しい。
後で気づくのは嫌なの。』
と、言うと
アルは、悲しみいっぱいの顔をして
首を横に振る。

そこへ
『アマ·····ネ····』
と、おばあ様の声。

私は、アルの手を借りベッドから
降りておばあ様の元へ。

ベッド横の椅子に座り
アルにみんなを呼んで貰う。

良さんにミロ大叔父様に
連絡をしてテレビ電話にしてもらう。

みんなが揃うと
おばあ様は、ベッドを
少し起こし一呼吸してから
『ミロお兄様。
今まで本当にありがとうございます。
私はお兄様方の妹で
本当に幸せでした。
私の家族をこれからも宜しくお願い
致します。』
と、息切れに言い

『良。温子さん。
本当にありがとう。
貴方達には、感謝してもしきれない。』
と、頭を下げ

『温斗。本当に優しい子。
だけど、仕事も出来る。
私は、あなたを誇りに思っているわ。』
と、優しく微笑まれ

『それから·····
と、再び息を整えて

『天音。過去にとらわれず
あなたの気持ちを大切に生きなさい。
私は、いつも
貴方達を見ているから。
そして、アルフレッド。
私の孫を泣かせたら
わかっているわね。
先程天音が言ったように
隠すのではなく、
きちんと天音に告げなさい。
その時、傷ついたとしても
騙されるよりよほど良い。
まあ、あなたの心を信じてるわ。』
と、言うと 
『ご心配おかけして
   申し訳ございません。』
と、アルは、頭を下げる。

ライラは、目をこすりながら
大おばあ様の手を握る。

おばあ様は、
『ライラ、ママと琴音を頼んだよ。
ライラは、優しく賢い子だから。』
と、言うと
『はい。大ばあちゃま。』
と、ライラは、にっこり笑い答えた。

おばあ様は、優しい顔をして
みんなを見てから
静かに目を閉じられた。

その目から涙がツーっと·····

おばあ様!!
ばあちゃん!!
お祖母様!!
琴!!
奥様!!奥様!!

みんなの声が
聞こえただろうか?

ルーカス先生が
おばあちゃまの元へ行き
確認して首を振った。

どんなにきつかっただろうか?
それでも······
最後におばあ様は
みんなに声をかけてくれた。

······· 一人一人に······

本当に
安田・マリア・琴
 あなたは、凄い方だ。

あの最大財閥ウォルトン家の御令嬢だ。

それからは、バタバタと過ぎた。

ミロ大叔父様の言いつけで
温斗が仕切りおばあ様の葬儀が
行われた。

マザーやファーザーも
帰国してライラと琴音の
面倒を見てくれた。

私は、温斗に言われるままに動く
おばあ様に恥じないように
ただ、ただ、その気持ちだけで。

各国からも沢山の方が
おばあ様の葬儀に参列してくれた。
本当に偉大な方······

おばあ様のお墓は
おじい様の横に

『おばあ様。
おじい様とパパとママ
おじ様、おば様とゆっくりしてね。』
と、言葉をかけると共に
天音は、意識を失った。
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