◇水嶺のフィラメント◇
 アンは感じたのだ──心から。

 メティアが心からレインを愛してくれていることに。心からレインを案じていることに。

 だからメティアは遠くリムナトまで駆けつけてくれた──レインの願いを叶えるため。

 と同時にメティアは確かめたかったのだ。ナフィルの姫が、愛するレインに相応な女性であるのかを。

 そうして彼女はアンを試した。

 その結果は──きっとメティアのお眼鏡に叶ったのだろう。

 アンは彼女の想いに気付くことが出来たのだから。王女の深い一礼には、メティアへの謝辞と感謝の気持ちがあった。

 レインを譲ることが出来ない詫びと、レインを愛してくれたことへの謝意。

 自分がメティアの立場であったなら、こうも(いさぎよ)く愛する人の恋人と対峙出来ただろうか?

 アンは自分の瞳を貫いたメティアの芯の強さに敬畏(けいい)を表した。


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