再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 そんな淡い期待を胸に央太に電話をしたのだが、何度かコール音が聞こえるのみで出ない。残念ながら仕事中なのだろう。
 
 小さくため息をついて電話を切ろうとしたのだが、「はい」と央太の声が聞けた。
 真綾は嬉しくなりつつも、央太が仕事中の可能性も否めないと思い、「今、お仕事中ですか?」と伺いを立てる。
 だが、央太から一向に返事がない。心配になった真綾が央太の名前を呼ぶと、彼は暗い声で言う。

「どうした? 真綾」
「えっと……。論文がようやく目処がついたんです。もし、時間があったら会いたいなと思って」

 用件を言いつつも、央太の異変を感じて不安が込みあげる。
 静まりかえる受話器越しの央太を思いながら、イヤな心音が耳に纏わり付いた。
 一呼吸置いてから、彼は小声で断りを入れてくる。

「ごめん、真綾。今日はちょっと無理だ」
「体調が悪いの?」
「ああ。だから、またにして」

 ごめん、とだけ言うと、央太は電話を一方的に切ってしまった。
 ツーツーという電子音が響いていても、携帯を耳から外せない。
 いつまでも電信音を聞きながら、不安だけが募っていく。

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