再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 何度も忘れようと努力したが、易々と忘れられる訳がない。

 それでもこの六年間、真綾は真綾なりに踏ん張って生きてきた。
 思い出として央太のことは心に封印していたのに、どんな運命の巡り合わせか。彼と再会してしまった。
 固く閉じていた心の鍵が解き放たれてしまう。それが怖かった。だけど……。

 ――一緒にいたいと思ってしまう……。

 あの手に抱きしめられたい。もっと彼の声を聞いていたい。もっともっと……一緒にいたい。
 そんな願望ばかりが込みあげてしまう。そんな恐れていたことが今、起こっている。

 間近に見える彼の目には情熱的なものを感じる。だが、それだけではない。恐れや不安、そんなマイナスな要素も感じた。
 逃げ回っても仕方がないのかもしれない。真綾の心が、彼を求めているのだから。
 
 ――それに、やっぱりもう一度時間をかけて話し合いをしなくちゃだし。

 そんな言い訳がましいことを頭の中で考えながら、央太を見上げた。

「わかった」
「え?」
「央太さんが強引なのは、昔から変わらないものね」

 承諾したのに、彼の反応は薄い。
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