再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 目を丸くしている央太に、真綾は小さく笑う。そんな表情を見たら、彼はますます驚いた顔をした。
 その顔が呆気に取られていて、なんだか可笑しくなる。

「ただ、準備してきてもいい? このままじゃあ……」

 今、着ているのはルームウェアだ。さすがに着替えたいし、出かけるのなら財布なども持っていきたい。
 そう伝えると、彼は破顔して大きく頷いた。

「別に、そのままでもかわいいけどな。……用意はしたいよな」

 嬉しそうに目尻を下げる表情は、彼が初めて真綾に声をかけてきたときと同じ顔をしていた。
 それがとても懐かしく感じて、胸がキュンと鳴く。
 央太に断りを入れたあと、慌てて部屋に戻る。

「私、保つかなぁ……」

 心臓が痛いほど大きく高鳴っている。彼と付き合っているときも常にこんな調子だったことを思い出し、昔の自分の強靭な心臓に喝采を送りたくなる。
 もう、手遅れかもしれない。彼が欲しいと叫ぶ自身がいることに、ずっと前から気がついていた。

 きっと、今日一日一緒にいたら、決意が崩れてしまうかもしれない。
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