再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 気持ちが手から伝わってしまうかもしれない、そんな不安があったから困惑してしまう。
 こちらの気も知らないで、央太はフッと声を出して小さく笑う。

「もう一度、俺に恋してもらわなければならないからな。必死なんだ」
「え?」

 どういう意味かと目で問いかけながら背の高い央太を見上げると、彼は甘くほほ笑んでくる。

「言っただろう? 俺はもう真綾を諦めないって」
「っ」

 言葉をなくしていると、彼は腰を屈めて耳元で囁いてきた。

「口説かせて、真綾」
「お、お、央太さんっ!」

 慌てて彼から離れようとしたのだが、それは失敗に終わる。
 彼にしっかりと手を握りしめられていたからだ。

「だから、離さないって言っただろう? 学習しないなぁ、真綾は」
「央太さんっ!」

 顔が熱くなる。自覚しているが、隠すことができない。
 彼が顔を覗き込んでくるからだ。それでもと視線をそらして、抵抗を見せる。

 すると、頭上からクツクツとおかしそうに笑う彼の声が聞こえた。
 こういうところも、全く変わっていない。それが懐かしくて、切なくなる。
 
「今日はのんびりモール内を歩くか」
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