再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 そして、彼の両頬に手で触れる。その瞬間、彼はビクッと身体を震わせた。
 その様子は迷子の子犬のようで虚勢を張りながらも、どこか弱々しくも感じる。

「央太さん。お仕事で何かあったの?」
「……」

 何も言わない央太だが、彼の心の均衡を崩す、何かがあったのは間違いないだろう。
 頬を触れていた手を、央太の首の後ろに動かし、ゆっくりと引き寄せた。
 ギュッと彼を抱きしめ、もう一度彼に問う。

「央太さん、大丈夫?」

 すると、真綾の腕の中で央太は首を小さく横に振った。

「大丈夫じゃない」
「央太さん」
「弁護士……辞めないといけないかもしれない」
「え……?」

 仕事のトラブルだろうか。まさか、そんな事態に央太が追い込まれているとは思いもしなかった。
 
 彼は、弁護士という仕事に誇りをもっている。
 だからこそ、その誇りを諦めなくてはならない現状に嘆いているのだ。
 
 彼の胸の痛み、心の叫びを感じ取り、切なくて苦しくなる。
 央太は、真綾の耳元で弱々しく呟いた。

「真綾……抱いてもいいか?」
「いいよ」

 即答する真綾から離れ、央太は荒々しく言葉を投げつけてくる。

< 17 / 224 >

この作品をシェア

pagetop