再愛婚~別れを告げた御曹司に見つかって、ママも息子も溺愛されています~
 本社にいた頃にも同じようなことがよくあったと思い出し、真綾は一人こっそりと笑ってしまう。
 すると、目敏いノアは真綾の笑みを見て眉を上げる。

「さぁて、真綾。昨日お願いしておいた顧客層についてだが」
「はい。資料を製作しました。今から部長のアドレスにデータを送ります」

 キーボードをカタカタと音を立ててリズミカルにタッチしながらデータ転送の準備をしていると、ノアは真綾の背後に立ってディスプレイを覗き込んでくる。

「真綾、今夜一緒に食事でも」
「行きません」
「OH~! 相変わらずスッパリと切り捨ててくれるね。潔すぎてまた好きになってしまいそうだよ」
「……」

 上司としては申し分ないのだが、ノアは初めて会った頃からずっと真綾に愛を囁き続けている。
 もちろん、彼の好意に応える訳にはいかない。
 真綾は断り続けているのだが、ノアは一向に諦めようとしないのだ。
 今回のようにきっぱりと断っているのだが、聞き流されているように思えてならない。
 マウスを動かしながら、視線はディスプレイを見つつ背後にいるノアに忠告する。

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