一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



清水から送られてきた書類を見て、匡が急いで屋敷に帰ると紗羽の姿はなかった。
気が動転している匡に『ひと月前に会社に行くと言って出かけてから、屋敷には帰っていません』と、あっさり三船が告げた。
週刊誌の記者やカメラマンが張り付いていた時期で、紗羽は出先から帰れなくなったらしい。
三船に『マスコミの目があるからしばらく屋敷に帰らない』と連絡を寄こしてから帰宅していないのだ。

「仲良しのゆかりさんのところだと思いますよ」

のんびりと話す三船は、なにも知らなさそうだった。
他に紗羽が頼れる場所はないからと、三船は親友のゆかりの家にいると思い込んでいた。
もとの小椋家にも近いし、田所家とは家族ぐるみの付き合いで幼い頃から何回もお泊りしていた関係もある。
三船が紗羽に『元気にしていますか』とメッセージを送ると、『こっちは変わりないから安心して』と返事があるし『今年のお月見はどうしましょうか』と尋ねたら『お花とお団子を注文しておいて』と指示もあったという。

「紗羽が本当にゆかり君のところにいるのか、すぐに確認してくれ」

匡の焦った様子に、三船もようやく大変な事態だと気付いたらしい。
勤務中のゆかりに無理やり連絡をしたら‶紗羽とはしばらく会っていない”と言われたので泣きそうになっていた。

「いったい何処へ……」

狼狽える三船に、おそらく清水のところだと伝えたら目を丸くしていた。

「神戸へ? またどうしてそんな遠くに……」

三船も週刊誌の記事は目にしていたらしいが、嘘ばかりを並べ立てた下品な記事としか思っていない。
紗羽が姿を隠す必要などないのにどうしてと、落ち込んでいた。
紗羽を大切に思っている三船には翔との疑惑を話すわけにいかず、匡は言葉を濁した。

「離婚したいそうだ」
「ええっ⁉」


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