一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ



三船にとって、寝耳に水の話だ。まさかという顔をしたまま固まってしまっている。
離婚という言葉を口にした匡ですら、未だに信じられない。
紗羽と未来に向けてゆっくり話をしようと思った矢先だったのだ。
まさかこのタイミングで離婚を求められるとは思ってもいなかったし、混乱するばかりだ。

匡は紗羽に離婚の意志があると知って、軽井沢での真実などどうでもよくなってきた。
あの日になにがあったかなんて、今さら知りたくもない。
紗羽が離婚を望んでいる事実だけが胸をえぐる。
弟へのつまらない嫉妬が、取り返しのつかない方向へ進んでしまったのだ。

(紗羽……どこに行ったんだ……)

屋敷のいたるところに紗羽のいた形跡があるのに、本人の姿はない。
リビングのソファーに座り込んでいた匡に、ニューヨークの翔から電話があった。
この前の不機嫌さを感じさせない緊張感のある声だった。

『山根さんから連絡もらったんだ』

「翔……」

『紗羽さんから離婚届が送られてきたって聞いて、驚いて』

「ああ」

翔と話す気力もなくて、匡は生返事を口にしていた。

『アニキにちゃんと話すよ、あの日のこと。週刊誌にでたらめの記事が出たり、こんな大ごとになってるなんて知らなくてゴメン』

翔にとっては、女友達と遊んだりドライブに出掛けたりするのはいつものことだ。
綺麗な女性なら誰とでも楽しくお喋りするし食事もする。深入りしない関係は楽でよかった。


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