一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
今回は、たまたま相手が兄嫁だっただけだ。
『アニキの奥さんに手なんか出さないよ』
紗羽が行きたがっていたから、軽井沢へ遊びに行こうと思いついたという。
『紗羽さんがアニキに無理を言えないって遠慮してたから、連れて行ってあげようと思ったんだ』
紗羽が車に酔ったり、ふたりがアレルギーに悩まされたのは予想外だった。
おまけに飲んだら眠くなる薬を買ってしまったらしい。
紗羽は気分も悪そうだったのでベッドに寝かせて、自分は床に転がったと翔は言った。
『少しウトウトしちゃって、起きたら汗かいてて……シャツを脱いだところにアニキが来たんだ。それだけだよ』
「どうして……あの時に話をしてくれなかった?」
今さらと思いながら、匡が尋ねた。
『紗羽さんにも言われたんだけど、アニキがそんなこと気にするなんて思いもしなかったんだ』
「お前にとっては、そんなことですむ話だったのか……」
返事を聞いて匡はため息をついた。
いつも通りのマイペースなだけで、翔に悪気がないのはわかった。
ただ、匡は違う。
紗羽を愛している分だけ、裏切られたと思った反動は大きかった。
怒りの矛先をどこに向けていいかわからず、ただ彼女から距離をとった結果がこれだ。
翔を責めても、紗羽は帰らない。離婚届まで送ってきたのだ。
匡にできるのは、彼女を探すことだけだった。