一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ

   
***


一方、森末の屋敷に帰れなくなった紗羽は精神的にボロボロの状態で神戸の清水のもとを訪ねた。
清水夫妻も週刊誌の記事を読んでいたので、紗羽を快く受け入れてくれた。
ありえない内容に、紗羽と匡の事情を知る清水もかなり落ち込んでいた。

「森末社長を見込んで紗羽さんを預けたんですが、こんなことになってしまって……」

匡に翔との関係を誤解されてしまったから屋敷に戻れないと紗羽が言えば、ますます清水は辛そうな顔をした。

「軽井沢でなにがあったんですか?」
「実は……」

紗羽は別荘での記憶が朧気で、一時的に深く眠ってしまったことを話した。

「健に電話して、原因を確認しましょう」

清水は医師である息子の健にさっそく電話をかけてくれた。
健は紗羽の話をじっくり聞いてくれて、おそらく薬の飲み合わせだと説明してくれた。
デリケートな紗羽は軽井沢で精神的に不安定になり、いつも以上に薬に過敏に反応してしまったらしい。
特にアレルギーを抑える抗ヒスタミン剤には強く眠気を感じるものもあるようだ。
だが手元にある薬だけでは証拠にもならないし、どう説明したら匡に事実が伝わるのかわからない。

『紗羽ちゃん、僕が匡さんに薬品の説明をしてみようか?』

健は夫婦関係を心配して、自分から匡に説明する役を買って出てくれた。
だが、紗羽は断った。

「あの日、匡さんは話も聞かずに怒っていたの。私のことを信じてくれませんでした。それにあんな記事が週刊誌に出てしまったんです。もう私は……」
『思いつめないで、紗羽ちゃん』

優しい健の声を聞くと、紗羽の目から涙が零れた。

「もう私は、匡さんの側にはいられません。健先生、お忙しいところありがとうございました」

お礼の言葉を言うと、紗羽は電話を切った。


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