一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
清水からは落ち着いて考え直すように言われたが、妻の和江は紗羽の立場を理解してくれた。
「自分を信じてくれなかった人と一緒には暮らせないっていう気持ちはわかる……」
同じ女性として、不貞を疑われた紗羽の辛さが身に染みたようだ。
「紗羽さんはまだ若いし、いくらでもやり直せるもの」
その言葉に紗羽はハッとした。
「やり直す?」
「十代からずっと森末さんしか目に入らなかったんでしょう? 少し彼から離れた方がいいと思うわ」
妻の言葉に、清水も同意する。
「冷却期間を置くのはいいと思います。焦ってもいいことにはなりませんよ」
紗羽の将来を心配するあまり、選択肢のない狭い檻の中に紗羽を閉じ込めてしまった気がしたのだ。
「私、匡さんと離婚しようと思います」
紗羽の言葉に清水夫妻は慌てた。
「すぐに離婚はどうかしら……やり直すっていうのは言葉のアヤで」
「離婚するかしないかは、森末さんのお考えもあるでしょうから……」
「ええ、でも匡さんは私を信じてくれませんでした。それに今回のスキャンダルは酷すぎて、彼の妻に相応しくないという烙印を押されてしまいました。これ以上彼に嫌われたくないし、迷惑をかけたくないんです」
夫妻は離婚には反対の立場のようだったが、紗羽の意志が固いと知ると離婚を仲介する役目だけは引き受けてくれた。
「紗羽さん、なにかやってみたいことや始めてみたいことはありませんか?」
「そうよ、紗羽さん。まずは気分転換をしなくちゃダメよ」
清水夫妻に問われて紗羽が口にしたのは『どこか遠くへ行きたい』という願いだった。
「日本以外の、どこか遠くへ行きたいです」
紗羽は匡からも、モリスエ・エレクトロニクス社長の妻という立場からも離れることだけを望んだ。