一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
清水は今度こそ自分が紗羽を守りたいと言ってくれので、匡との連絡は任せることにした。
紗羽が居場所は絶対に話さないでほしいと言うと、清水夫妻は気持ちを汲んでくれたのか固く誓ってくれた。
すぐに、紗羽はカナダへ旅立った。
清水の紹介でオンタリオ州の湖の近くにある電子機器製造受託サービスの会社に就職が決まったのだ。
英語と日本語で電子関係の専門用語がわかるというと、秘書の助手として採用された。
会社のあるトロントが、紗羽の新しい居場所になった。
トロントの街は想像以上に大きくて、紗羽は圧倒されることばかりだった。
空気も美味しいし、大都会でありながら自然も豊かだ。
ここには誰ひとり知り合いはいないが、逆にいえば誰も紗羽を知らないからのびのびと暮らせた。
刺激的な毎日はあっという間に過ぎていく。
匡のためにと勉強してきた専門知識がとても役に立ち、社内でも信用を勝ち取ることができた。
クイーンズパークで季節の移り変わりを楽しむ毎日。
街の中心部にある高いCNタワーも見慣れた頃、紗羽は正式な秘書になっていた。
そんなある日、上司から声を掛けられた。
上司のメアリー・ブラウン部長は女性ながら役員を務めている優秀な人で、夫と子ども三人の五人家族だ。
ファミリーパーティーに紗羽たち部下を招待してくれるほど気さくなのに、仕事になると圧倒されるほどエネルギッシュな人物だ。
「スズハ、あなたも日本出張のメンバーに加わってね」
「日本にですか?」
「日本と台湾の会社と我社の三社で提携する新しい事業なの」
「凄いプロジェクトですね!」
「これが資料よ」
プリントアウトされた相手企業や工場の名前を見て、紗羽は顔を曇らせた。