一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


「お帰りなさい」

「ああ、ただいま」
「無事でよかった……」

また紗羽の目に涙が滲んできた。今にも零れそうだ。

「ずいぶん揺れて、生きた心地がしなかった。紗羽に会うまでは死ねないって思い続けていたんだ」

抱きあげられたまま、紗羽は匡の顔を見る。彼もかなり緊張していたのか、いつもより青白い顔色だ。

「匡さん……」
「生きて帰ってこられた」

命の危険さえあったのだ。
見つめあうふたりにとって、けしてオーバーな言い方ではないだろう。
お互いの体温が感じられる喜びに、再び抱き合えた嬉しさが加わる。

ふたりの周りでは無事を喜びあう会社の仲間たちの声が響いているし、泣き出す女性社員もいるほどだ。
航空会社の社員がケガ人や気分の悪くなった人はいないか確認する声があちこちから聞こえる。
だが紗羽と匡はふたりだけの世界に浸っていたので、周りの喧騒を気にする余裕はなかった。
抱き合うふたりを見て、紗羽の同僚や上司たちからヒューヒューと口笛を吹かれた。拍手もある。
それすら耳に入らないように、ふたりは見つめ合っていた。

そんなふたりを、山根は涙ぐみながらじっと見つめていた。

「スズハ」

やっと機内から出てきたのか、ブラウン部長が声を掛けてきた。

「あ、部長!」

紗羽も甘い気分から我に返った。
ここには仕事で来ているのだ。本社の指示を伝えなくてはと部長に走り寄る。

「お疲れさまでした。ご気分はいかがですか?」
「私は大丈夫。モリスエが隣の席にいたから、すごく助かったのよ」
「え?」


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