一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
紗羽が怪我をして入院した後、匡は弁護士を通じて孝二は後見人として不適切だと家庭裁判所に申し出てくれたらしい。
まだ正式な通達はなされていないが、おそらく孝二は後見人を外されることになる。
小椋電子は、清水や古参の従業員が辞めてから経営はいっきに傾き借入金を抱えていた。
その原因の一つは、孝二が経営コンサルタントに騙されて法外な謝礼を払わされていたためだ。
おまけに孝二は悪友に騙されて、海外の不動産へ投資までしていた。
会社の資金や紗羽の遺産までもつぎ込んでいたのだ。
結局孝二は全ての責任を取る形で会社を辞めさせられて、家族一緒にどこかへ引っ越してしまったという。
「紗羽さんの遺産に手をつけているなんて……もっと早く気がついていたらと思うと……」
清水や弁護士が頭を下げるが、失ってしまったものをどうすることもできない。
「私のことより、父の会社はどうなるんでしょう?」
恐々と紗羽が匡に尋ねた。
「負債は……当面は不動産を売却したり会社の株を担保に銀行から借りてなんとか凌ぐことになる」
「売却……屋敷と………軽井沢の別荘ですね」
「君には申し訳ないが、残っていた財産のほとんどを失ってしまう」
「いえ、会社が残るなら両親も喜んでくれるでしょう」
紗羽が冷静でいられたのは、病院でゆっくり休めたからかもしれない。
久しぶりにひとりになれたし、これからのことを考える時間がたくさんあったのだ。
(もう、社長令嬢ではなくなるんだわ)
今すぐにでも、ひとりで働きながら生きていく覚悟はできていた。