一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ


ゆかりは彼氏ができたといっては女子トークをしたがったが、紗羽の方は特定の人と付き合ったことがなかった。
せいぜい、ゆかりの恋人の友達グループと映画や遊園地に出かけたりカラオケに行ったくらいだ。

「彼、紗羽のこと好きだとか言わないの?」
「まさか! 匡さんは私よりずっと大人だよ。きっと恋人とか婚約者とかいると思う。私なんてまだ高校生で子どもだし……」

紗羽が必死で話す様子を見て、ゆかりはなんとなく察した。

(紗羽は自分では気がついていないけど、森末さんに恋しているんだな)

「そうか……でも、恋するのは自由じゃない?」
「自由って?」

意味がわからなくて、紗羽はゆかりの言葉をそのまま繰り返した。

「好きだなって相手を想う気持ちは、紗羽の自由だってこと」
「気持ちは自由………」
「ベタベタ追っかけて相手に迷惑かける訳じゃないし、心の中だけでも好きでいれば?」

すとんとゆかりの言葉が胸に落ちた。

(私、匡さんのことが……好きになっていたのかも)

紗羽は恋と憧れかごちゃまぜになったまま、匡への思慕を募らせていた。

(心の中なら誰にも知られない。彼を想うのも自由なんだ)

「ま、ガンバリな!」

ゆかりがポンと肩を叩く。
なんだか匡への恋心を応援してくれたようで、紗羽は嬉しかった。



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