一度は消えた恋ですが――冷徹御曹司は想い続けた花嫁に何度でも愛を放つ
三船の言葉に、匡は頷いた。
「もちろんだ」
それを聞いた三船は笑顔で夕食の支度に戻っていった。
「今夜はご馳走でございますよ」
ウキウキと去る後姿を見送って、匡も着替えるために二階の自室へと向かう。
さりげなく言われたが、三船の言葉は重かった。
隠しているつもりだが、匡の気持ちを見抜かれているのかもしれない。
(まだ早い………)
三船は紗羽の笑顔が見られるようになったのは匡のおかげだと言っていたが、救われたのは匡の方だ。
紗羽と一緒に暮らし始めてから、屋敷の中が清涼な空気で満ちていて心地よい。
社長になってから仕事ばかりの味気ない毎日だったし、会社を守るために殺伐とした気持ちで暮らしてきた。
紗羽がここに住むようになってからは、仕事で疲れて帰ってきても癒される。
彼女が笑っていてくれるだけで安らげるのだ。
(この生活を失いたくない)
匡はせめて紗羽が大学を卒業してから、将来の話をしようと決めていた。
もちろん彼女の気持ちが一番だが、自惚れではなく嫌われてはいないと思っていた。
今の彼女は、義兄から助け出してくれた感謝の気持ちから打ち解けてくれているのかもしれない。
でも、少しずつ匡に心を開いてくれているように思えるのだ。
(まずは、彼女の願いを大切にしてやりたい)
やりたいことがあるなら存分にさせてやりたいし、行きたいところがあれば連れて行ってやりたい。
紗羽が一度は失った夢を、もう一度取り戻させてやるのが今の自分の役目だと匡は思っていた。