記憶喪失のお姫様は冒険者になりました
でも人間が先に手を出したのだとしたらその証拠がないとドラゴンを生かせることができない。
「何か…何かないの…?」
そう考えている時だった。
「ミホ、あと少しで来るぞ!」
クロさん…っ。
私はクロさんの掛け声に何も反応できたかった。
だって、私は……。
「ミホ?どうした…っ?」
人間に傷つけられたドラゴンを私はまた傷つけるなんて…私にはできないよ!
「クロさん、私…少しだけドラゴンの体を見てもいいですか?!」
私は思い切ってクロさんに聞いた。
「ドラゴンの体を……?」
クロさんはなぜ?と言いたげな顔をしていた。
普通ならそう思うよね。
でも…私はドラゴンを殺さずにすむならそうしたい。
ドラゴンを元の住処へ帰したい。
「クロさん、お願いします!」
私はクロさんに頭を下げた。
クロさんは少し考えてから言った。
「何か…考えがあるんだな?」
「え?」
それって…。
私は咄嗟に頭を上げた。
クロさんを見ると口の端を上げ、ニカッと笑った。
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