双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
伝え忘れたわけではなく、わざと黙っていたのは明白だった。

父がため息をついた。

「晃介、お前はいったいなにが不満なんだ? 可愛らしいお嬢さんだったじゃないか。それに家柄もいい、これ以上ないくらいの理想的なお相手だ」

父親を睨み怒鳴りたくなる気持ちを、晃介はどうにかこうにかやり過ごした。

昔から父はいつもこうだった。自分のやることが一番正しいと信じて疑わず、相手の気持ちなど微塵も考えていないのだ。

相手にするだけ無駄だった。

「とにかく、正式な話が来たら断ってください。私にそのつもりはありません。では」

きっぱりと言い切って、自分も帰るため車が停めてある駐車場へ向かおうと、父に背を向ける。歩きだそうとしたところ呼び止められた。

「待て、晃介」

振り返ると、父が少し険しい表情になっていた。

「親に決められた見合いが気に入らないのはわからなくもない。だがお前も三十五だ。いつまでも独身というわけにはいかんだろう。親として心配してるんだ」

その言葉を、晃介は思わず鼻で笑ってしまう。

前回父が持ってきた縁談は、製薬会社の社長の娘だった。

前々回は銀行の頭取の娘、今日は厚生労働省の役人の娘だ。
< 103 / 188 >

この作品をシェア

pagetop