双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
高圧的で自分が決めたことが絶対だと信じて疑わない頑固な父に、母はいつも怯えて気を遣っていた。ある年齢に達するまでは晃介も父が怖かった。

本当のところ晃介が一番腹を立てているのは、父を憎みながら父のもとで医師をしている自分自身に対してなのかもしれない。

奥歯を噛み締めて車を目指す。一台のワンボックスカーが目に留まった。

両親と小学一年生くらいの男の子の親子連れだ。何かのお祝いだろうか、少しフォーマルな格好をしている。手を繋いで嬉しそうだ。

幸せを絵に描いたような光景を、晃介は足を止めて見つめた。

晃介も母もこのような穏やかで温かな家庭を望んでいただけのだ。

……無性に、葵と子供たちに会いたかった。

晃介を見つけると、ぶつかるように飛びついてくる晴馬と悠馬を抱きしめて、ひだまりのような笑顔に頬ずりをして。

甘やかな香りがする葵の髪に指をからめて、腕の中に閉じ込めるのだ。

たとえ触れられなかったとしても、ただひと目顔を見るだけでもいい。

彼らが存在するところが、自分のいるべき場所なのだ。

そう、強く思う。

今日は行けないと伝えてはあるけれど、彼らは普段通り家にいる。

今から行けば、十分に過ごす時間は取れるはずだった。

車の鍵を握りしめ、晃介は再び歩き出した。
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