双子を極秘出産したら、エリート外科医の容赦ない溺愛に包まれました
怒りに満ちた息子からの絶縁宣言に、大介が立ち上がり机を回り込んでこちら側へやってくる。

机に腰をかけるようにもたれかかり首を傾げた。

「で? どうするんだ? 俺は息子だろうと、俺に逆らう者には容赦せん。好きな女と一緒になるのは自由だが、白河病院(うち)にはいられなくなる。今までのキャリアをすべて失うことになるんだぞ」
 
予想通りの脅し文句に、晃介は頷いた。

「それでも、俺は葵を選びます」
 
大介が、忌々し気に眉を寄せて舌打ちをした。

「お前はそれでいいかもしれん。だがお前の患者はどうなるのだ? スウェーデンからお前が件の技術を持ち帰るのを心待ちにしている。お前がこの病院で執刀できないとなれば、今の日本で長くは生きられない者たちだ」
 
大介の言葉に、葵は晃介の背中で小さく息を飲んだ。
 
そうだ晃介が持ち帰った技術が必要な患者がここで彼を待っている。

例えば彼がほかの病院で医師を続けられたとしてもオペができるとは限らない。
 
技術があってもそれに見合った最新の設備と、チームを形成する人材がいなくては、その技術を生かすことはできないのだ。

晃介が持ち帰った医療技術は、莫大な資金力と最先端の設備を維持する白河病院でしか活かせない。

「どうなんだ? 晃介。お前は女のために、患者の命を犠牲にするというのだな?」
 
医師である晃介の急所を突く質問だ。
 
医療従事者である葵にとっても、胸が痛くなるような言葉だった。そんな決断ができるはずがない。
 
彼はいったいどうするのだろう。
 
晃介は沈黙し、ジッと父親を見つめている。そして、静かに口を開いた。

「確かに、俺が持ち帰った技術で救えるかもしれない命が、この病院にはたくさんいる。一縷の望みをかけて全国から集まった患者たちだ。……俺がここを追われれば彼らは助からない」
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