ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

「とにかく、しつこいようだけど……小春、おまえはガチャなんか回すな」

 蓮は再度、鋭い声で言った。

「異能を持たない魔術師は無力だ。普通のバトロワで言ったら武器持ってねぇのと一緒だし。でも、代償はばかにならねぇ。回す方がよっぽど危険だ」

 小春としても、できることなら回したくはなかった。
 彼の言う通り、代償が恐ろしくてたまらないのだ。

 先ほど言っていたように、それが心臓だったら。
 そうでなくとも、こんなわけの分からないゲームのために身体の一部を失う判断はできない。

「蓮は……何を失ったの?」

「俺は脾臓(ひぞう)。よく分かんねぇけど、この通り生きてるし大丈夫そうだ」

 蓮のことだしきっと深く考えず回したのだろう、と小春は思った。
 そういう意味では確かに運がいいのだろう。

「引いたのは────」

 蓮は空いている方の手を持ち上げる。
 次の瞬間、ぼうっと目の前が明るいオレンジ色になった。

「“火炎魔法”」

 緩やかに揺らめく炎に照らされた小春は言葉を失った。

 蓮の手に宿っている火炎。
 この火が本物であることは、じんわりとあたたかくなった空気の温度で分かる。

(本当に、本当なんだ……)

 納得して受け入れるのに、あれこれ理屈を並べ立てる必要なんてなかった。
 信じがたい非日常が、現実へと介入してきている。

 すっ、と蓮は炎を消した。

「熱くないの?」

「俺は平気。自分の炎で火傷することはねぇな。どうだ、信じられたか?」

「……うん。でも、分かんない。何でこんなこと……。誰が?」

 小春は戸惑いと混乱を拭えず、呟くように尋ねた。
 いったい誰が、何のために、どうやってこんなゲームを運営しているというのか。
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