ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜

第3話 11月6日

 小春は朝の情報番組を観ながら朝食をとっていた。

『昨日午後、都内にある私立高校で、全身が石化した遺体が発見されました』

 弾かれるように顔を上げる。
 映し出されているのは間違いなく、小春の通う名花高校の映像だ────。

 支度を整えて「行ってきます」と家を出る。

 門前に立つ蓮の背を見ると、不思議と心からほっとした。

「蓮、おはよ」

「……おう。無事みたいだな」

 ふたり並んで歩き出し、小春は足元に目を落としながら切り出す。

「朝、石化死体のことがニュースになってた。あれって和泉くんのことだよね……? 腕だけじゃなくて、全身が石化してたって」

「ああ、そうだろうな。俺も見た」

「でも、何か……変だった。明らかに変死体だよ。普通はもっと騒動にならない?」

「そういう気味の悪ぃ些細な異常はな、だいたい運営側の仕業って考えとけばいい」

 都合の悪いことは、運営側が何らかの“超自然的”な力によって操作している。

「運営側……」

 小春は小さく呟いた。

 まったく全貌(ぜんぼう)が掴めないが、やはり人間ではないようだ。
 運営側はことごとく、異能やゲームをもとに発生した事件と死体を隠匿している。

 きっと、警察の目まで曇らせるに及ぶのだろう。
 明日には和泉の件も、未解決事件として捜査終了となるはずだ。

 魔術師が何をしても罪に問われないのは、皮肉にも運営側のお陰だった。



 和泉を殺害した魔術師への警戒を強めながら、どうにか無事に放課後を迎える。
 ほっと小春は息をついた。

「よかった、何事もなくて」

「帰るまでは油断できねぇぞ」

 むしろ放課後こそ、向こうにとっては好都合な狙い目の時間帯だろう。
 人もまばらになり、先生も干渉してこない。周囲の目はほとんど逸れることになる。

「つか、明日もそれ以降も気抜くなよ?」

「あ、そうだよね。気をつけなきゃ」

 気を引き締めつつ鞄を手に取ったそのとき、突如としてサッカー部員たちが現れた。

「いた、蓮! ごめん、ちょっと来てくんない?」

「え? 何でだよ」

「ちょっと部でトラブル。頼む!」

 彼の返事を待たずして、部員たちは強引に引っ張っていく。

「悪ぃ、小春。ちょっと待っててくれ」

「あ、うん!」

 小春はただ見送ることしかできず、放課後の教室にひとり残された。
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