ウィザードゲーム〜異能バトルロワイヤル〜
「ごめん……。そうだよね、報いなきゃ。みんなを裏切るわけにいかない」
涙を拭い、決然とした表情で言った。
それぞれの力強い頷きが返ってくる。
────ほどなくして、紅とアリスの遺体は眩い光とともに消えた。
「……色々、話し合いたいよな。もう最後だし」
蓮が静かに言った。
“最後”という言葉の重みがのしかかる。
「そうだね」
運営側との戦い────それがまだ、この先に待ち受けている。
その最終決戦に向けて、作戦を練っておかなければならない。
悲しむのは、すべてが終わったあとでいい。
「とりあえず落ち着きたいし、紅の家に戻るか」
主はいなくなってしまったものの、荷物もあるしどのみち戻らなければならない。
「あ、鍵……どうしよう」
紅が持っていたはずだけれど、彼女の遺体は既に消えてしまった。
何とはなしにあたりを見回したとき、ふとポケットに重みと異物感を覚えた。
上から触れると、ちゃり、と音がする。
「鍵だ……」
取り出したそれを見て呟く。
(紅ちゃん……)
時間を止めている間の彼女の仕業だろう。思わずそれを握り締める。
とっくに先を見越していたようだった。
連絡を取って日菜とも合流し、一行は紅のマンションに向かった。
紅の部屋に上がると、小春はさっそく口を開く。
「改めて言うけど……最終的にわたしは運営側を倒したいと思ってる」
その声は凜と静寂を揺らした。
「正直、それでどうなるのかは分からない。戦うことで、本当にこんなゲームを終わらせられるのか。それとも、あっさり殺されて終わりか……」
「…………」
「いままでのことを思うと、実力的に敵わないかもしれない。命の保証はない。だから、どうするかはみんなに任せる」
自分からはどんな選択も強制できない。
現実的な見通しの話をした上で、意をともにするかどうかはそれぞれに任せるしかない。
たとえ、それで自分ひとりしか残らなくても。
「俺はやる」
真っ先に言ったのは蓮だった。
「死ぬのが怖くて逃げたって、どうせ12月4日には強制的に終わりが来る。やるしかねぇよ。それしか守る方法がねぇんだから」
小春を。そして、仲間たちを。
ふたりの言葉を受け、奏汰も頷いた。
「俺もやるよ。最初から一緒に戦ってきた。ひとりじゃとっくに死んでたと思う。みんなのお陰で繋いだ命だから、最後まで一緒に戦う」
仲間たちには本当に助けられたし、支えられた。守られた。
それなのに、この佳境で知らんふりなんてできるはずもない。
「あたしも、あたしの命はみんなのために使いたい。それでも罪は消えないけど……せめて向こうで慧くんや琴音ちゃんたちに顔向けできるように」
顧みるように瑠奈が言う。
それだけが唯一の贖罪に思えた。
「わたしもあいつらには借りがある……。このゲームのせいで死んだうららの仇も討たなきゃ」
紗夜は首に触れつつ告げる。
「ちょっと怖いけど、わたしも……お役に立てるなら一緒に戦います。怪我ならわたしに任せてください」
献身的な性格ではあるものの、ゲームに対しては割と傍観傾向にあった日菜。
同調してくれるなんて少し意外だったけれど心強い。
ただ、自分にできることをするだけ────日菜の原動力はそこにあった。
「……冬真は?」