忘れえぬあなた ~逃げ出しママに恋の包囲網~
マンションに着き、先日お邪魔したのと同じ専用エレベーターの先にある最上階の部屋。
すっかり眠ってしまった凛人を抱きながら、私は部屋にお邪魔した。

「荷物はここに置くぞ」
「はい」

凛人を抱いていたために持つことのできなかったスーツケースは尊人に運んでもらい、私はひとまず凛人をソファーに寝かせた。

「奥にゲスト用の寝室があるから、使ってくれ」
「うん、ありがとう」

先日も思ったけれど、まるでホテルのように大きくて広い部屋。
きっと、私のお給料では家賃すら払えないんだろう高級マンション。
もちろんそれがうらやましいって訳ではない。
近くにいるからこそ尊人が背負う責任の重さを知ってるし、多くのわずらわしさを抱えてもいるのも事実。
実際尊人のように生きたいかと言われれば、素直にイエスとは言えない。
でもそれは私が感じることであって、凛人はどう思うのだろうか。
もしかしたら、尊人のような生き方を望むのかもしれない。
そう思うと、私は凛人の未来を奪ったことになる。
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